古典ギリシア語入門《CD付》

◎ポイント:グラマーに取り組んでいると、敷居高い。底がない。手応え感じない。結局、残るIt’s Greek to me.な感じ。そこで「まずこれだけは押さえておきたい古典ギリシア語グラマー」な本書。入門して初級で仕上げておきたい目標が具現化されていて、分量、難易度、配列とも適切に設定・構成。学び易さも考慮されており、初級グラマーの和書における学習書・独習書の決定版。・一冊仕上げることで、簡要にして系統的にグラマーを概観できる（辞書が引ける・文法書が読めるわかる）・解答及び音声教材付き練習問題・語彙集等一応全部入りとコンパクトさ、学び易さを両立する適度なバランス感、和書ではありそうでなかった実は稀有な学習書。・また、本書を基本書にすれば、他の学習書の特徴に応じたその良いところを選んで利用することが独習者にも容易。◯α「得難き学びの友との邂逅」古典語の学習書として簡にして要を押さえた好著。一冊やり通すのに意を用いており、ギリシア語グラマーをまずは一通り仕上げてしまおうというコンセプト。つまり、学習内容を精選・順序付けして整理し、グラマー全体像を学び易いように配慮している。特に、独習者にとっては、ギリシア語入門として、迷路に惑ったり息切れしたりすることなく、押さえるべき所を押さえるための格好のガイドとなる。ギリシア語は洋書に良書が多いとは言え、日本語を母語とするものにとって語学を学ぶのには和書はやはり大変有り難い。◯β「逃せない好機」割高に感じるも、時間と手間を省けて、手元に置けるのに代えがたし。・廉価で入手し易くて、むしろ教科書としてなら優れているが、指導者なしでこの一冊のみを用いて独習するのは結局容易ではない田中松平『入門』（岩波書店）。・取っ付きやすく独習向きで入門期に相応しいが、講読からの構成がかえって、クセのあるグラマー全体を体系的に把握するのが意外としにくい『CDエクスプレス』（白水社）。・独習可能でグラマーの記述や表も多く練習問題や講読も充実、古き良きロングセラーながら、それ故にどちらかと言えば重厚長大で、四週間で終わらないし索引にクセがあったり、やはり人を選ぶ『四週間』（大学書林）。いずれも良書に違いないが、結局、忙しい独習者にとっては、和書なら名ガイドブック・池田『古典 入門』の便利さに頼る他なし。基礎が身に付く。やり通せる。一冊やりきった自信が次につながる。 復刊！何はともあれ出版社に感謝。もちろん著者にも。NHK語学講座のような便利なものがない、古典語に独習者でもアクセスしやすくさせる好著が復刊。◯γ「立ちはだかる、古の言葉の難解極める謎」独習可能とは言えども、古典語に本格的な入門をするのに適した学習書である故、屈折語の癖というか、印欧語の傾向を知っておくと学習が進むという面あり。（英語や中国語あたりの学習経験しかないと、性・格、法等の範疇や多彩な語形変化に戸惑う。）また、文法事項の簡潔な整理を旨としているため、ある程度勝手がわからねば理解しにくいのが難点と言えば難点。 されど、学習書としての配慮が、高津『基礎ギリシア語文法』に比肩すべき、独習者必携という他なし。 グラマー自体のマスターに習うより慣れろ式に徒らに貴重な時間を投入してしまうよりも、本書で文法と読解をこなしてテクストを読める準備を終わらせて、実際のテクストにあたる。必要に応じて辞書を引けるようになり、高津『ギリシア語文法』等の体系的文法書や洋書等も読み解きながら、先人達の遺した資料を活用し原書に当たっていくのは確かに実際的。◯δ「膨大で複雑な語形変化を照らす、簡単明瞭な導きの力強き光」本書では、個々の題材の何をいかに学ぶべきかのエッセンスをコンパクトに示しつつ、音韻の影響や変則も少なくない重層的な体系をなすグラマー全体を把握しやすくまとめていく手際良さが絶妙。そして、練習問題には解答あり。その音声教材（なお、Φ/φの音価は［f］扱い）も。簡潔ながら、語彙集（希和・和希）、索引あり。一応、一揃い備えているのがやはり便利で頼りになる。（田中松平『入門』等での独習では、練習問題の訳読本位のためか習うより慣れろ的に細かく節を分けて分説している構成なのが、どうしてもグラマーの体系的把握という面では冗長でストレスフル。索引や目次の他語彙集等が整備されていて、説明もある程度の長さでわかりやすく整理していくので、事典のように参考文献として用いるなら確かに便利ではあるのだが・・・） 一つ難を述べると巻末の文法表のうち、動詞の活用表については一覧性やレイアウトの点であまり見易くなく、類書と比べて改善の余地があり並みの出来である点。◯ε「続く学びの旅の歩み、そして開く古の至宝の扉」24課からなるので、一月2課やれば一年で、毎週1課やれば半年で、1回を回せる計算。（毎日やれば、何と24日。某『四週間』並みのスピードになる。まさに白水社のアナザー『エクスプレス古典ギリシア語』、文法篇。が、まずはα〜ωのアルファベットや気息記号等を覚えて読み慣れるところから始めないといけぬので流石にいきなりは無謀ではないかと。）24課全体の構成としては、最初の 1/3で入門として大体の基礎固め、次に2/3まで多彩な変化を誇る動詞を中心に据えて形態論をほぼ完成させ複雑な文章に備えて、残り1/3は構文と補遺でどんどん読んでいく、という感じ。 なお、屈折語学習の常として、各課掲載の語形変化表は着実に記憶していくを要す。そして、巻末の文法表を折に触れて眺めて、迷子にならぬようグラマー全体における現在地を確認して来し方行く末をイメージしておくのが望まれる。