週刊文春 トップ屋魂 名物記者が語るスクープの裏側 (イースト新書)

副題にあるように確かに「名物記者が語るスクープの裏側」でしたが、大下英治さんがトップ屋だった時期が古すぎて、たぶん若い世代の方は何の話なんかが分からないのでと危惧しています。広島大学文学部の学生時代に梶山季之さんの出会いからスターとします。1966年ですから半世紀以上前のエピソードです。当方も梶山さんの小説を読んでいますが、ピンとくる人が少ないでしょう。40年以上前の1975年に亡くなられているので、忘却の彼方に入っていた作家でした。最初に『週刊文春』編集局長の新谷学さんとの対談は面白かったです。現在のエピソードが詰まっていました。一方で、大下さんの話は、田中角栄、児玉誉士夫、小佐野賢治などの話題を登場させています。それだけ過去のトップ屋なんですね、話が。ここでも梶山季之、城山三郎を登場させ、自分の目標とした話が書かれていました。95pの当時の『週刊文春』のトップ屋だった人の名前を列挙していますが、残念ながら誰一人として知りません。大下さんの回顧録を読まされているようでした。三島由紀夫の自決は衝撃的でした。1970年の話です(102p)。とてもよく覚えていますが、話としては半世紀前のことになるのです。この時代的なギャップが最後までずっと付きまといました。三越の岡田茂社長と女帝と呼ばれた竹久みちの関係も、176p以降に詳しく紹介されています。岡田社長も過去の人になりましたし、竹久みちなんて、当時を知らない人は全く関心のない人ですので、大下さんにとって大切なエピソードが読者にはほとんど興味関心がないということにもつながるのです。解説は花田紀凱さんでした。週刊文春の元編集長ですし、大下さんと一緒に誌面を作ってきた同士ですから、持ち上げていますが、それでも半世紀前の話を繰り返し書いているのには閉口しました。400ページ以上の分量の本でしたが、時代感覚のずれが際立った本だとしか言えません。